冬の味覚に無くてはならないのはタラバガニ。
豪勢なカニ鍋は寒い時期のご馳走ですね。
眼鏡を湯気に曇らせてカニの殻をハサミで切りながら極太のカニの身を食べる幸せ、誠に堪りません。
鍋や茹で以外にも、刺身で食べると身の繊維質の心地よい食感が楽しめます。
またカニ味噌の深く極上な旨みを味わうと、とても幸せな気分になります。
タラバガニは甲羅が30cm未満、脚を拡げると1mに達する大型のカニです。
寿命はなんと30年!とても長寿ですね。
頭の鋭い突起がタラバガニの特徴的な形です。
広告の写真などでは鮮やかな赤色をしていますが、生体は暗紫色の殻に包まれています。
タラバガニの意外なこととして、ヤドカリの仲間なのです。
通常カニは横方向に歩きますが、タラバガニは縦方向にも歩くことができるのです。
そして外観的な特徴、カニはハサミ以外に8本の脚がありますが、タラバガニは6本のみ体外に露出しています。
残りの2本は腹の中に隠れており、腹のゴミ掃除などに使われます。
マダラなど天敵に襲われたときは脚を切り離して逃げるときがあります。
脚を切り離しても、やがて再生するのです。
日本近海では北海道北部の日本海、オホーツク海、東部太平洋の水深30~350mの砂泥に生息しています。
水温が低い海域に生息しますが、過去に駿河湾や徳島県沖の水深850~1,000mの深海で発見された記録があります。
ロシア・ノルウェーの国境を挟むバレンツ海では1960年代に旧ソビエトの科学者がタラバガニの放流を行います。
繁殖に成功し、1980年代にはノルウェー海でもタラバガニの生息が確認されます。
現在、この海域の個体群はロシアとノルウェーの水産資源として活用されていますが、外敵がいないため爆発的に個体数が増え、外来種として既存の生態を脅かす存在にもなっています。
現地では旧ソビエト指導者の名前「スターリン・クラブ」と呼ばれています。
日本でもタラバガニは非常に重要な水産資源物で、メスのカニの採捕は禁止されています。
ただし、販売について罰則規定はないので、輸入したメスの個体を「子持ちタラバ」として流通・販売されています。
年間、カニ籠や刺し網で年間100~200トンの水揚げがあります。
日本の水揚げされたカニ以外に、ロシア方面からの輸入が多く有名でしたが、最近ロシアでは好漁場のオホーツク海で漁獲規制が行われており輸入量が減っています。
そのため、最近ではアラスカ産の輸入品が増えています。
近年では「カニの王様」と呼ばれているこのタラバガニ、昔はタラ漁の網に紛れ込んでおり、網に掛かったカニは捨てられていました。
タラの漁場によくいることから「タラバガニ」と呼ばれたのです。
大正時代は缶詰など加工品の材料に過ぎませんでした。
昭和4年に発表された小林多喜二の小説「蟹工船」はカムチャッカ沖で獲れたタラバガニを船上で缶詰加工をしていたことを取り上げているのは有名ですね。
昔はとても安いカニに過ぎなかったタラバガニですが、旨さが広く知れ渡る頃になると食用種としてのカニの存在価値が高まり、価格も高騰します。
そのため時折、タラバガニによく似たアブラガニが偽装されて販売されていることがあります。
アブラガニも美味しいのですが、タラバガニよりやや小さく味噌が不味く食用にはむきません。
今が一番寒い時期、温かいタラバガニに舌鼓を打つのも一興ですね。