夏の魚には「タカベ」があります。聞きなれない魚です。市場では比較的値段が高く、脂分が強く、塩焼きに適した魚と紹介されています。春から夏にかけてが旬のようです。
「たかべ」は高知県や伊豆地方の呼び名だそうですが、漢字で書くと「鰖」。見たこともない漢字です。「たか」は岩礁を意味する漁師用語で、「べ」は魚を意味するそうです。その名の通り沿岸の岩礁域に生息しています。
鰖は体長20㎝ほどの魚ですが、海中で泳いでいる姿は背部の青緑色と黄色の縦縞がとても美しい魚です。海からあげるとたちまち肌の色が落ち着いてしまうようですが・・・。
旬は5~9月の夏にしか味わえない季節感のある魚です。7~9月の産卵期は特に脂がのって旨味が増し、一番おいしい時期と言われます。
漁師さんや魚屋さんが、塩焼きで一番はタカベと答えるようです。刺身や煮物もおいしいに違いはありませんが、とにかく塩焼きが一番らしいです。
タカベは脂が強い魚で、鮮度落ちは激しいものがあります。鮮度がいいものを刺身にしようとすると、その身は鮟鱇やゴッコみたいにグニャグニャで腰がありません。
刺身包丁には脂がべったり付着します。小型の魚の上、身が薄いので余計に刺身にするには手間がかかります。食べると口の中にはねばりつくような脂が残ります。
タカベは塩焼きが一番。身がしっかり締まって、刺身で感じた身のぐにゃぐにゃ感もありません。タカベの塩焼きは万人を満足させる美味しさだと思います。
伊豆七島の漁師さんは「たかべの背越し」という漁師めしを食べているそうです。小ぶりのタカベを鱗とはらわたとひれを取り除いて、背から一気に包丁を入れ、薄切りにします。
これを醤油で中骨ごと食べるのですが、かみしめると骨の中から得も言われぬエッセンスが口中に広がり、そのおいしさに陶酔してしまいそうになります。漁師さんはタカベの本当のおいしさを知っているからこんな料理を作るのでしょうね。
高級魚と言われるタカベですが、値段は1匹300円~400円弱の値段のようです。旬になればスーパーの店頭にも並ぶようです。
産地は伊豆諸島の新島、神津島、八丈島で漁獲される、東京都産として販売される数少ない魚です。タカベは潮通しの良い岩場に群れをなして泳ぎ、プランクトンを餌にして育ちます。
紀伊半島や伊豆諸島では定置網漁や刺し網漁で漁獲されます。
タカベは地方によって、シャカ、ベント、ホタ、シマウオなどの呼び名があるそうです。
タカベには細胞の老化を防ぐビタミンEが豊富です。DHAやEPAなど不飽和脂肪酸を含んでいるため、動脈硬化の予防や、コレステロールの低下に効果があります。
この夏是非タカベの塩焼きを食べたいものです。スーパーの魚売り場を注意してみておいてください。店員さんにおいしい食べ方も聞いてみてくださいね。