魚のフェロモン その5

前回では魚の“集合フェロモン”についてお話しをしました。
同じ属種の魚が“仲間”と反応する集合フェロモンは、腹ビレの後ろにある肛門の突起から分泌されており、集団で生活することで敵に捕食される機会を減らすことができるのです。
ちなみに集合フェロモンはゴキブリ(形を思い出すだけでも…私が最も苦手とする動物です)の糞にも含まれており、昔から言われている“1匹みたら30匹いると思え”という言葉はまさにその通りではないでしょうか。
最近の害虫駆除ではこの集合フェロモンを利用しておびき寄せているのだそうですよ。

さて集合フェロモンは「集うこと」ですが、これとは逆の動きのフェロモンというものもあります。
それは“警報フェロモン”、コイやナマズ科の魚で知られているもので、捕食者に襲われたり、喧嘩をしたりして皮膚に外傷ができると表皮の細胞から特殊な物質が流れ出ます。
このため、近くにいる仲間は危険を察知して一斉に逃避行動を取るのです。

たとえばコイの群れに1尾の傷ついた仲間を入れると、たちまち群れは崩れて四散してしまいます。
この逃避行動は目の神経や側線の神経を切っても影響を受けることがありませんが、嗅覚の神経を切ると発生しなくなるのです。
つまり、彼らは漂ってくる“におい”によって警報を知るのです。
以前登場した“ブルヘッド”も鼻の神経が警報フェロモンの刺激に対して敏感に反応すると言われています。
また警報フェロモンは同種の仲間に対して効果があるのが普通ですが、コイの仲間は近縁種にいたしても有効(ただし、類縁関係が薄い種の間では効力が弱い)なのです。

さて集合フェロモンで仲間が集まるゴンスイの表皮にも警報フェロモンを出す細胞が沢山ありますが、不思議なことに1尾の傷ついたゴンスイを集団に放すとすぐに群れに溶け込むのです。
コイのように魚の群れが散らばるどころか、傷ついた仲間を迎え入れるのです。
ゴンスイは毒のあるとげで身を固めているので、襲われる心配がないからでしょうか。

言葉を持たない魚にとって、フェロモンは求愛や集団行動、警戒など生活の様々なシーンに於いて大切なコミュニケーションツールなのです。
画像出典元:http://tokuze.livedoor.biz/archives/50855579.html

 

魚のフェロモン その4

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