ふ化した仔魚の生存率が少しでも高くするため、餌となる動物プランクトンが潤沢にある温暖な海域で産卵をすることはマイワシのDNAに刻み込まれており、日本沿岸では黒潮域が主たるマイワシの産卵場となります。
黒潮域は西から東に向けて毎時3~5キロメートルの潮の流れがあり、まだ十分に泳ぐことが出来ない仔魚は黒潮に流されながら一日50~100キロも移動します。
黒潮の海域は速い流れによって生じる力により、海水が鉛直的に混合されます。
これにより、深層から栄養塩が供給されて植物プランクトンが繁殖します。
その植物プランクトンを今度は動物プランクトンが食べることによって繁栄の輪が形成されます。
そして黒潮を流されているマイワシの仔魚は、潤沢な動物プランクトンを摂餌しながら生活を送り成長してゆくのです。
さて、ここでひとつ面白いことがあります。
仔魚の生残数が減少する理由の一つに、動物プランクトンによる捕食ということが挙げられます。
餌になるはずの動物プランクトンに喰われる!?一体、そりゃどういうことなのでしょう。
実は動物性プランクトンの種類の中には、魚食性指向があるものが存在します。
サジッタという0.3㎜の肉食プランクトン(ヤムシという名の方が馴染みはあるのかもしれません)、小さなクラゲがイワシやニシンなどの仔魚に食らいつくことがあるのです。
そのため、ある特定の海域で1歳未満の若い魚が極端に少ないときは、これらの肉食プランクトンの発生を疑って海水成分を調査することがあります。
黒潮域のマイワシ仔魚は春を迎える頃には1㎝以上の大きさになり、所謂“シラス”と呼ばれるのはご存知ですね。
駿河湾や相模湾では春の風物詩であるシラス漁が始まり、漁港には連日山ほどのシラスが水揚げされます。
さらに成長を続けて3㎝程に達した仔魚は変態をして成魚の様な形状になり、仔魚から稚魚にステージが変わり、変態を終えた稚魚は黒潮の最北端である房総沖まで流されると、黒潮を離れて本州沿岸を北上します。
房総半島沖合の黒潮北端には、500㎞の幅で寒流の親潮と混じり合う混合海域が存在しており、マイワシはこの混合海域から10℃以上も水温が低い親潮域に向けて回遊を続けます。
マイワシが親潮に入る理由として、餌となる動物プランクトンが黒潮と比べて桁違いに多く存在するためです。
夏になると、春に回遊を始めたマイワシの稚魚は、三陸の沖合を通過して餌を沢山食べて成長を続け10センチに達した未成魚になります。
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