サケあれこれ その6


シロザケやカラフトマスなど、回遊性の特徴が強いサケ系魚類は成長期から成熟期の数年間は海洋に出ることは広く知られたことですが、回遊するコースは最近まで判明されていませんでした。
魚体の遺伝的性質を利用した標識方法により、海洋生活の間の回遊コースが解明されつつあります。
サケの生活史が判明されることにより、サケ科魚類の資源量も推定できるのです。
一般的にサケの回遊を知るための標識とは、放流魚に取り付ける放流タグ、寄生虫などの生体、耳石、鱗など魚体的特徴、海洋で捕獲した遺伝子の解析のことをいいます。
サケの分布情報を得るため、主に沖合で魚の標識放流が行われていました。
太平洋の沖合で延縄により漁獲された魚にタグなど標識を付けて放流して、その魚たちが日本の母川またはその近くで再捕することができれば起源を知ることができます。
これまで日本で放流された膨大なサケ科魚類の再捕データが蓄積されており、回遊している魚がどの系群に属するかという、海洋分布を大まかに知ることができました。
しかし,再捕される魚の大部分がその年に産卵のために母川回帰をする成魚であり、生まれたばかりの幼魚や海に降りる前の未成魚の分布について、ほとんど情報を得ることができません。
また,標識放流を行うことができる場所は限定されており、再捕努力には地域差があるため、正確な系群組成を推定することはできなかったのです。
最近、特に遺伝子の解析によりサケ科魚類が母川回帰する河川、あるいは地域集団毎に遺伝子が異なることを利用して系群組成の推定ができます。
回遊する集団の魚が持つ遺伝子情報はほぼ一定(遺伝的多様性が少ない)なので、基準になるデータを一旦確立すると長い間に渡って用いることができます。
分析する対象の野生魚や人工ふ化魚、さらには稚魚から成魚まで全生活期において応用できるのです。
サケについて遺伝子のスコアリング方法が統一され、世界の研究者の協力によりアジアから北米まで主要な地域集団をカバーする77集団の20遺伝子座について基準データが作成されています。
この基準データと沖合に生息するサケの遺伝子頻度を比較して系群組成を推定しました。
海洋に生息する様々な集団のサケのサンプリングを取って、系群組成値の平均と信頼区間を推定します。
これにより判別したサケの地域集団は、日本系、ロシア系、アラスカ系が4集団、カナダのブリティシュ・コロンビア系とアメリカ・ワシントン系サケという内訳です。
そして、各々の集団のサケは生物的地理学に即した海域を回遊するのです。
画像出典元:http://elliottyy.exblog.jp/8221196/

 

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