アサヒガニを知っていますか?


カニという言葉を想像したとき、真っ先に出て来るのはタラバガニやズワイガニ、毛ガニなど高級食材ではないでしょうか。
これらのカニは冬の代表的な美味しい味覚で、広く認知されています。
日本沿岸に生息するカニの種類は1,000種ほど存在しますが、食用できるカニは数十種類に限られています。
タラバ、ズワイ、毛ガニのカニ御三家以外は、ほとんどローカルな扱いで知名度が低いものばかりですが、御三家に引けを取らない旨さを誇るカニもなかにはいます。
そのうちのひとつが「アサヒガニ」なのです。
5月を過ぎて初夏に入る頃、高知の市場にはアサヒガニが入荷し始めます。
アサヒガニはハワイ諸島以西からアフリカ東岸までかけての、インド太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しており、日本沿岸では伊豆から鹿児島にかけて本州中部~以南に分布しています。
鹿児島では「カブトガニ」、高知では「ヘイケガニ」と呼ばれています。
甲幅は15cmほどで、カニとしては大型の部類に入ります。
背面の赤橙色をした甲は縦長で小さな棘に覆われており、大きい鋏は平たく、工具のスパナのような形をしています。
ほかのカニと異なり、腹部が甲の下に折り畳まれておらず、歩脚の間に突き出ている様はふんどしを締めているようです。
形態としてはヤドカリの様な異尾類に近く、ヤドカリとカニの中間位置的存在で原始的な形態を残すカニと分類されています。
水深10から50mの砂泥底に生息しており、歩脚で後ずさりするように砂底に潜って眼だけを出して貝類やゴカイなど小動物を捕食して生活をしています。
砂に潜って生活するため、これに適した脚の先は尖っており、スコップのような形になっています。
またこの脚を上手に使って海中を泳ぎ回ることができ、砂の中にじっと隠れているのではなく、意外に我が物顔で海底を闊歩しているかもしれません。
前後に歩けますが、ほとんど前には進まず、また一般的なカニのような横歩きはできません。
茹でた後に大きな甲羅を剥くと、身が充実していて膨れ出すほどです。
実に甘くて美味しい身は、エビの様なさっぱりとした風味が楽しめます。
カニみそは僅かですが存在しており、濃厚な旨みが口の中いっぱいに拡がります。
カニみそは雌の方が多く、雌の内子も非常に美味しいです。
また甲羅を縦に2つに割って塩コショウ、オリーブオイル、白ワインなどを加えてグリルにすると強い旨さが存分に楽しめます。
夏を過ぎる頃に高知のアサヒガニ漁が終わりますが、秋になると鹿児島県沿岸のアサヒガニ漁が始まります。
活魚輸送が難しいので、県外に向けては主に冷凍処理して輸送されています。
この夏は艶やかな色合いで上品な味わいのアサヒガニを試してみては如何でしょうか。
画像出典元:http://www.fukusige.net/blog/asahigani20140430

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