「カジキマグロ」はマグロという名がついていますがマグロではありません。「カジキマグロは俗称で、マグロはサバ科、カジキはマカジキ科とメカジキ科に属しており、マグロとは別種のものです。
カジキは高速で回遊する大型魚で、生息域は広く、肉質など多くの点でマグロにいていることや、カジキがマグロを捕獲する延縄漁業で漁獲されるために、「かじきまぐろ」と呼ばれることもあるのです。
「カジキ」の由来は、鋭い上顎で船の舵をとる、硬い木の板でできた「舵木」を突き通すことから、舵木通しと呼ばれ、その呼び名が縮まってカジキと言われる説が一つ。
別の説では、梶木は和船の最下部にある板のことですが、それを上顎で貫くことからこの名がついたといわれています。
カジキには日本近海では6種類が生息しています。
・メカジキ:メカジキの目は大きいので、このような名がつきました。体長は4m、体重は300㎏を超えるものもあります。気性は荒く、自分より大きなクジラや船を攻撃することもあります。別称メカ、ナイラギとも呼ばれます。漢字では女梶木、女旗魚、女舵木と書きます。メカジキの料理は、照り焼き・ソテー・フライ・煮つけ・から揚げ・炒め物・ムニエルなど、脂を使った料理がよく合います。
・マカジキ:体長は4m。青い縞模様が特徴。古くから日本の食文化になじんでおり、カジキの中では最もおいしい高級魚。漢字では真梶木、真旗魚、真舵木と書きます。マカジキのみ旬は冬。調理法はバターなどと相性がいいため、ステーキや照り焼きがおいしくいただけます。また新鮮なものは刺身や鮨だねとして人気があります。
・バショウカジキ:体長は3m。背びれを広げた時、芭蕉の葉に似ていることから。別称バショウ。全魚類中最も速く泳げる魚です。漢字では芭蕉梶木、芭蕉旗魚、芭蕉舵木と書きます。料理としてはマカジキやメカジキほど商品価値はないようですが、部位によっては良質な旨味があり、フライやムニエルに適しています。
・クロカジキ:体長4.5m。背中の色が生前はブルーだが、死後は黒く変わります。別称クロ、クロカワと呼ばれ、漢字では黒梶木、黒旗魚、黒舵木、黒皮と書きます。料理法は刺身・粕漬け・味噌漬け・惣菜原料・練り物・あるいは缶詰などに利用されます。
・シロカジキ:体長は4m。別名カツオクイと呼ばれ、カジキの中では最重量を誇ります。
・フウラウカジキ:体長は2m。大きくならず上顎は短い。
カジキの代表種はマカジキですが、太平洋やインド洋の熱帯海域に広く生息する回遊魚です。日本近海では春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下します。
マカジキ以外の旬は夏から秋にかけてがおいしい時期です。
温暖な海を高速で遊泳し、エサを追って回遊する大型肉食魚です。1匹または数匹で行動し、つがいの絆の強いことが知られています。
カジキの産卵は5~9月で、分離浮性卵を産卵します。産卵期には普段は沖合にいるカジキが、沿岸に近づくので、この時期にカジキ釣大会が催されます。
カジキの漁獲はマグロのはえ縄漁で獲られることが多いですが、伝統のつきん棒漁も行われています。
カジキの多くはスポーツフィッシングの対象魚であり、針にかかった時の引きとジャンプに釣り人は魅了されるのです。JGFAによる大会や、トローリングが盛んに行われています。
カジキは種類によって含まれる栄養素は異なり、風味も違えば合う料理法や食べ方も異なります。
「旗魚は 王者の如く 天駆けり」 魚秀
「水揚げの 舵をくひいる旗魚かな」 早川信一
「悪童の ごとく旗魚の 横たはる」 頬魚
「嘴も尾も 削がれて河岸の 旗魚かな」 吉田道子