さてボラといえば、旨いものに“カラスミ”がありますね。
名前の由来は中国伝来の墨の「唐墨」に形が似ているためだそうです。
日本では長崎産のカラスミが古くから有名で、長崎野母のカラスミ、越前の雲丹、三河のこのわたが「天下の三珍」と称されていたものです。
長崎には普通のボラより大きい60センチサイズの“カラスミボラ”がいると言われていますが、これは4歳魚のボラのことを指します。
ボラは生まれてから3年ほど内湾で生活していますが、成熟した個体は外湾に出て卵を産みに回遊します。
長崎はそんなカラスミボラが訪れる場所のひとつで、冬になると卵を持ったボラがやって来るのです。
カラスミを作るにはボラの腹を包丁で開いて卵巣を取り出し、薄い塩水で十分に洗って血抜きをして2,3日ほど塩に漬けこみ、今度は真水が張っている桶に漬けこみます。
漬けている間は毎日揉んで柔らかさを確かめて、卵巣が均一に柔らかくなっていれば取り上げます。
卵巣を破らないように十分に気を付けながら板の上にからすみを並べ、更に板を乗せて重しを掛けてゆき、一晩で余計な水分を取り去り、翌日になったら板をどかします。
日中は形を整えて、直射日光を避けた状態でカラスミを乾燥させて、再び夜になると板に挟んで形を直します。
水気を抜いて、翌日以降は日干しをして夜は板で挟んでゆきます。
表皮に浮き出る脂肪分を拭きながら、およそ10日間この作業を繰り返してゆくと、飴色の平たいカラスミが出来上がります。
さて長崎にやって来るカラスミボラが何故旨いのかというと、まだ卵巣が完全に熟していないので卵の粒が舌にさわらず、ねっとりした感じで言うに言われぬ旨さをもっています。
アジアの国々でもカラスミが作られていますが、これらのほとんどが卵が熟しているため舌ざわりがイマイチで、日本産には及ばないといわれています。
カラスミはタンパク質が豊富に含まれた食物で、脂肪も多く30%以上の割合で含まれています。
ボラの卵は孵化するまで波間に浮いていますが、脂肪が多いことと関連があります。
この脂肪の成分はセチルアルコール(セタノール)が主成分で、マッコウクジラから取れる油も同じ成分となっています。
なかなかお値段がたかいものですが、今年の冬は食べてみたいです。
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