前回では資源の減少に伴うマグロ漁の世界的規制により、厳しい経営を強いられるマグロ船について、経費やコストを減らす取り組むことを綴りました。
今回は船舶の面から、運営を改善する取り組みについて綴ってゆきたいと思います。
船舶技術の向上により、明治時代には石川播磨重工や住友重工など重工業企業は鋼鉄船の製造を始めますが、船体が非常に高価ということもあり、鋼鉄船は軍艦や大型客船などが中心に採用されます。
マグロ船は昭和中期までは木造船が主流でしたが、第二次世界大戦後以降、戦後復興期を経て国民の生活が向上するにつれマグロの消費量が増えだします。
太平洋、インド洋、大西洋など世界の海を航海してマグロを獲るにはより強い船体がのぞまれ、鋼鉄船の導入が進みます。
船体を鋼鉄で造られた鋼鉄船は、非常に厳しい環境でも耐えられるだけの強度を持っています。
しかし船体が重いため、燃料を多く使ってしまう欠点がありました。
現在では沿岸、近海の小型漁船は、より軽いFRP(強化プラスティック)製の船がほとんどですが、マグロ船など大型遠洋漁船は今も鋼鉄船が主流となっています。
これまで十年程度で廃船にしていたマグロ船について、船舶導入サイクルの見直しが進みます。
遠洋漁船で一般的なサイズ、400トンの船を新造すると約7~8億円が掛かります。
船の寿命は20年程度なので、年間3,500万円以上の水揚げ利益を出す必要があります。
経費や税金など必要経費を差し引いて3,500万円という金額が残らないと、船の建造費が回収できないのです。
昭和中期のマグロ漁黄金時代であればこの金額も数年で回収できましたが、現在の様に漁の規制が厳しい時代はとても難しいものです。
そこで最近のトレンドとして、船体の延命改修を受ける船が多いことが挙げられます。
船体や甲板、船底や機関配管など船の構造部分の大規模修繕を行い、これにより最大20年程度、船舶寿命が延長できたのです。
修繕費に2億円掛かりますが、新造船を購入するよりも遥かに安く済むのです。
船体の修繕以外に、釣り上げたマグロを保管する冷凍庫の冷媒強化や軽量化、延縄の投網、揚網の自動化、GPSなどハイテク航海機器の搭載や衛星電話など通信施設の更新、船員の居住空間の向上など様々な部分まで修繕が及びます。
マグロ漁は非常に厳しい状況の中で経営を強いられておりますが、利益を生み出して常に安定した供給をするためにも様々な努力が続けられています。
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