
クエの生態について
- 分類:スズキ目ハタ科マハタ属。標準和名は「クエ」、関西では「モロコ」と呼ばれることもあります。
- 分布:日本では房総半島以南~九州、沖縄周辺の沿岸に生息。世界的には東アジア、東南アジアの温暖な海域に分布。
- 生息環境:水深30~100m程度の岩礁域に多く、縄張りを持ち単独で行動する習性が強い。
- 特徴:成長は遅く、寿命は20年以上。大きいものは全長1m、体重20~30kgを超えることもあります。
- 食性:肉食性。魚類、甲殻類、イカ・タコなどを捕食。
- 漁獲・養殖:天然は希少で高値。和歌山県や長崎県などで養殖が進められています。
クエの栄養
- タンパク質:良質で消化吸収率が高い。筋肉の修復や体力回復に効果。
- 脂質:白身魚だが適度に脂がのり、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を含む。血液サラサラ効果や生活習慣病予防に期待。
- ビタミン類:ビタミンD(カルシウム吸収を助ける)、ビタミンB群(疲労回復)を含有。
- ミネラル:カリウム、マグネシウム、リンなどが豊富。むくみ予防や骨の健康維持に役立つ。
- 低カロリー:脂がのっていてもエネルギー量は控えめで、ヘルシーな高級魚。
クエ料理
クエは「フグより旨い」とも称され、冬の味覚として珍重されます。代表的な料理は以下の通りです。
- クエ鍋(クエちり)
- 昆布出汁にぶつ切りのクエを入れ、白菜、白ネギ、春菊、豆腐などと煮る。
- クセのない白身に旨みが凝縮し、脂の甘みを楽しめる。ポン酢でさっぱりいただくのが定番。
- 刺身(薄造り・厚切り)
- 新鮮なものは刺身に。薄造りでポン酢や薬味と合わせると上品な味。
- 脂ののった個体は厚切りで食べると甘みと弾力を堪能できる。
- 煮付け
- 醤油・みりん・砂糖で甘辛く煮付ける。
- 皮や骨周りのゼラチン質がとろけ、濃厚な旨みが楽しめる。
- 酒蒸し
- クエの切り身を昆布と一緒に酒蒸し。
- あっさりとした白身に上品な香りが加わり、高級料亭の味わい。
- 唐揚げ
- 下味をつけてカラッと揚げると、外は香ばしく中はふっくらジューシー。
- 子供にも人気の調理法。
クエの相場価格
クエは「幻の魚」と呼ばれ流通量が少なく、天然物は特に高値で取引されます。
- 天然クエ(活け・大型個体)
- 1kgあたり 10,000~20,000円前後
- 特に冬の鍋シーズン(11月~2月)は需要が集中し、さらに値上がり。
- 20kgを超えるような大物は高級料亭や専門店にしか出回らず、価格は応相談。
- 養殖クエ
- 1kgあたり 4,000~8,000円前後
- 天然より安定した価格で流通。和歌山県(日高町など)、長崎県、愛媛県などで養殖が盛ん。
- 飲食店でも比較的手が届きやすくなり、近年は「クエ鍋フェア」など観光資源にも活用。
養殖と天然の味の違い
クエは成長が遅いため、養殖で出荷サイズになるまでに4~5年かかります。この違いが味に反映されます。
- 天然クエ
- 餌:自然の小魚・甲殻類などを捕食。
- 味:身が締まり、脂は上品にのっている。
- 特徴:ゼラチン質を多く含む皮や骨周りの旨みが強く、まさに「鍋に最適」といわれる。
- 季節変動:特に冬に脂が乗り、最高の味わい。
- 養殖クエ
- 餌:配合飼料(魚粉や魚油ベース)を与え、脂がのりやすい。
- 味:天然に比べるとやや脂が重く、身質が柔らかめ。
- 特徴:安定して脂があり、調理しやすい。刺身や唐揚げで人気。
- 改良:近年は餌の工夫で天然に近い風味を再現する取り組みが進んでいる。
クエの「旬」は冬で、鍋料理に最適。ただし春の爽やかな刺身や、秋の回復期の旨みなど、季節ごとの味の違いを知ると一年を通して楽しめます。


