何だかちびっ子ギャングみたいなタイトルになってしまいましたが、決して大袈裟なことではありません。
見た目はスマートで細い魚ですが、顎を開けると鋭い歯が並んでおり、少し触れただけで切れてしまう怪我を負うことがあります。
しかもこの歯、普段は寝かしていますが餌になる魚を捕食するときは歯がちょうつがい状に立ち上がるという機能性に富んでいるのです。
カマスは太平洋、インド洋、大西洋の熱帯、温暖な海域に生息し、サンゴ礁や岩礁の周辺で群れを成して行動します。
日本付近では、西日本以南の沿岸にアカカマス、ヤマトカマス、オニカマスが主に生息しています。
オニカマスに至っては体長が2メートルを超える個体もあり、鋭い歯の鬼のような顔の巨大魚は恐怖心さえ感じます。
泳ぐスピードは時速150キロに達し、獰猛な性格のオニカマスは餌となる魚類を執拗に追い回し、狙った獲物は逃がさないハンターです。
獰猛な理由はカマスの消化器は短く、すぐに餌を消化してしまうので、絶えず空腹状態にあるとのことです。
ときに人に対しても襲いかかり、大怪我をした人が世界中に何人もいます。
地域によってはサメより危険と言われることがあり、海外ではバラクーダと呼ばれ恐れられている存在です。
一般的に国内で流通しているカマスはアカカマス、アブラカマスとも呼ばれます。
体長はオニカマスよりもぐっと小さく50センチ前後、釣りの定番魚ですがハリスが鋭い歯で切られてしまうことがよくあります。
漁では定置網や延縄で漁獲されます。
秋から春が旬の季節で、脂がよく乗っており塩焼きにすると大変美味しいです。
アカカマスは鮮度がよければ刺身で美味しく食べられます。
天ぷら、唐揚げ、フライ料理に抜群で、また日干しにして干物にするとアミノ酸やイノシン酸が増えて、より深いカマスの旨みが楽しめます。
魚肉に少量の塩を足して摺ると弾力性のあるすり身になり、蒲鉾などの原材料としても最適です。
ヤマトカマスはアカカマスより身の水気が多いので生食には向きませんが、干物にするとたちまち香ばしい味が口いっぱいに広がります。
さて、海のギャングことオニカマスですがこちらは食べるのは控えましょう。
特に熱帯域に生息するオニカマスは捕食する魚が食べた餌の動物プランクトンが毒性となり、オニカマスがシガトキシンという毒に汚染されてしまいます。
これを食すると眩暈や吐き気、下痢、発熱など食中毒症状が発生します。
また、シガトキシンは熱に対しても耐性があるため、一般的な調理方法では毒を分解することができません。
以前はオニカマスが鮮魚店やスーパーで売られていたこともありますが、食品衛生法により現在は販売が禁じられています。
アカカマスの塩焼き、今年は食べたいです。
さかま図鑑で執筆を始めてから、すっかり食べたい魚が増えてしまったワタクシでございます。