有明海沿岸の干潟では佐賀県有明水産振興センターが生産した“アゲマキガイ”の種苗が順調に繁殖しています。
そして佐賀県有明水産振興センターでは海に放流したアゲマキガイの生育状況を調査することを継続しており、調査の結果次第では今後25年ぶりにアゲマキガイの漁が再開されるのかもしれません。
アゲマキガイは九州から中国、朝鮮半島の沿岸汽水域、海水域の泥質の干潟に生息している貝類で、マテガイに非常によく似ています。
“アゲマキ”とは古代から平安時代にかけての未成年男子の髪型のひとつで、髪全体を二つに分けて、耳の横で括って垂らします。
日本書紀や古事記では男神“イザナギ”の髪型があげまきということが綴られています。
さてアゲマキガイは春先になると細々と流通しますが、流通しているものの殆んどは中国産もしくは韓国産です。
形の似ているマテガイと味が違うことが特徴で、アサリやハマグリのような味わいのマテガイに対して、アゲマキガイはクセのない素朴で素直な味わいのなかにほんのりと感じる甘みが特徴的で、美食家たちに根強い人気があるのです。
そして煮るなど、熱を通しても身が固く締まらないことも人気のひとつと言えるでしょう。
日本国内では瀬戸内海や有明湾が有名な産地でした。
有明湾では1980年代の年間水揚げ800トンをピークに下降を続け、1990年初頭には年間1トンと漁獲量が激減、遂に1992年には漁獲量が途絶えてしまいます。
ちなみに激減した理由は今でもはっきりしておらず、佐賀県では絶滅の危機にあるとして「絶滅危惧第2種」に指定しています。
佐賀県水産振興センターでは1996年にアゲマキガイを人工的に繁殖させる事業に着手、ふ化した幼生が順調に生育するまでになりました。
生産技術を体得したのち、種苗を有明湾に放流することを試みますが、その際種苗が潮に流されたり、天敵に捕食されることがないようにネットで覆うなど環境を整えていました。
アゲマキ生産事業から20年経過した2016年、有明湾の沿岸40カ所で生育・定着状況を調査した際、7年前の2009年より何と12倍もの個体の確認ができました。
佐賀県では来年にはより精密な生育状況の調査を実施して資源量の推定を行う予定です。
もし十分な資源量が確認された場合、26年ぶりにアゲマキガイ漁が再開できる見通しであるとしています。