夏の魚にマンボウがあります。何ともユーモラスな顔かたちの魚ですね。水族館でよく見かけますが、このマンボウは体重が900㎏、とても重い体をしています。体長は4mほどになり、重さも2200㎏にも成長するマンボウもあるようです。
詳しい生態は分からないようですが、マンボウは変態する魚です。直径1㎜という小さな卵から孵化したマンボウは、丸い体に尾びれもついて河豚に似ています。
成長過程でいつどう変態するか分かりませんが、成長したマンボウと生まれたてのマンボウでは似ても似つかぬ形のようです。カエルのオタマジャクシで知られる変態です。
マンボウは一度に3億個ほどの卵を産みます。卵は産みっぱなしのため、孵化したマンボウが成長できるのはごく一握りしか生き残れないようです。
海底200mほどの深みから、海面に出てきて横たわったりすることもあるようです。この時は皮膚に付いた寄生虫などを鳥や小魚に掃除してもらっているようです。
マンボウの食性は、クラゲやイカなどを捕食します。泳ぎは決して早くありませんが、水族館で餌を食べている時の動きを見れば、そこそこの速さで泳いでいるように見受けられます。
マンボウは都市伝説に満ちた魚です。
・「小魚の骨がのどに詰まって死ぬ」
マンボウの消化能力は弱く、魚をそのまま食べると骨が腸に刺さって死ぬことがあります。そのため水族館ではイカやエビのすり身を与えているようです。
・「ほぼ直進でしか泳げずに死ぬ」
ほかの魚のように機敏にターンはできないけれど、大きく回転はできます。確かに小回りはきかないけれど、それが原因で死んだことはありません。
・「皮膚が弱すぎて触っただけで傷がつき、それが原因で死ぬ」
皮膚が弱いのは事実のようです。表面はザラザラして硬いのですが、人が強く触ると跡がつきます。傷つきやすいので感染症になって死ぬことはあります。
マンボウの料理は台湾が名物のようです。台湾の東部に花蓮県という地域があり、台湾で最大のマンボウの産地になっています。多くの店でマンボウ料理が食べられます。
マンボウは白身で癖がないため食べやすいと評判です。刺身で食べると美容にも役立つコラーゲンが豊富に含まれており、女性に人気があります。
マンボウの腸は大変長いのですが、刺身として食べたり、ホルモンとして食べるとおいしく、美容効果もあるため、評判になっています。
日本ではマンボウは珍味とされていますが、台湾では一般の市場で購入でき、食材として庶民に親しまれています。
日本では紀伊長島の地魚料理として、新鮮なマンボウ料理を味わえます。さっと湯通ししたマンボウを酢味噌であえて食べたり、煮物やお造りにしていただくことができるようです。
マンボウは定置網で漁獲するのが一般的で、5月ごろが旬と言われています。
マンボウは感じて書くと「満方」や「円魚」と書きます。これはマンボウの姿かたちからつけられた名前です。
「マンボウの遊泳 夏を愉しくす」 外薗夏盛
「まんぼうが ゆっくり泳ぐ 青葉汐」 近藤日陽子
「マンボウの おちょぼ口なり 青岬」 渡辺咲子
「春昼の 背鰭ゆらりと 寝まんぼう」 鈴木翠塔