鳴く魚(ホウボウ)


日が暮れて周りが暗くなるとき、海から「グワッグワッ」、「ボーボー」と不気味な音が聞こえてきます。
それまで穏やかな海の光景が一転して恐怖に感じてしまい、さっさと釣り竿を片づけて帰りたくなるものです。
そんなときに限って釣り竿にアタリがあるもので暗闇の中、恐る恐る釣り上げると真っ赤なホウボウが釣れました。
とても大きな鳴き声を上げながら、釣り針に喰いついていました。
ホウボウは浮き袋に空気が出入りするときに発する「グーグー」という大きな鳴き声が、魚名の由来ともされています。
カサゴの種類に属していますが、カサゴは身の危険を感じると大きな声で「グーグー」と鳴きます。
このホウボウ、海底を歩くような変わった泳ぎ方が特徴的な姿で、方々歩き回る様に餌を探すことから「ホウボウ」と呼ばれています。
鮮やかなコバルトブルーの胸ヒレのうち一番下の胸ヒレ三条が硬くなっているので、海底を歩くことができ、また触角のような働きがあるので餌を探すときに重宝しているのです。
海底を歩くのをやめて泳ぎ出すとき胸ビレを大きく広げますが、ヒレというよりは翼を拡げる感じで舞い上がります。
コバルトブルーの胸ビレがいっぱいに広がるときの美しさは目も覚める色彩で、さながら「海の孔雀」といった華やかさです。
ホウボウをはじめ、鳴き声や音を出す魚はおよそ50種余りあります。
浮き袋より音が聞こえる魚はホウボウ以外では、イシモチというニベ科の魚で耳石が大きく非常に硬い魚です。
この魚はシログチというあだ名があり、漢字で書くと「白愚痴」。
釣り上げたとき、浮袋から「グーグーッ」という鳴き声が愚痴をこぼすように見えることから、シログチと名付けられたといいます。
また英語でも太い声で鳴くことからクローカー、ドラムフイッシュと呼ばれており、大きな声を出すということがわかります。
その他、鳴き声を出す魚はアジの仲間が知られていますが、一般的に海の中で鳴き、しかも小さな声です。
シマアジを静岡では「ギュウギュウ」、和歌山で「グイ」、鹿児島で「ウタゴ」と呼んでおり、鳴き声を由来としたことが分かります。
イサキの仲間のシマイサキは警戒したときに鳴き声を出します。
魚が鳴くときというのは身に危険を感じたとき、脅かし、仲間内の合図、オスとメスの呼び合いなどコミュニケーションのひとつであることには間違いありません。
画像出典元:http://find-travel.jp/article/94

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