美味しいものには毒がある!?…フグのおはなし


「美しいものには棘がある」そんな諺が昔からありますね。
高校時代、クラスで一番美人と言われた○○ちゃんに告白したら、非常に激しくきつい言葉で断られて、しばらく落ち込んでしまった友人の顔が思い出しましたよ。
調子乗りだった彼が寡黙でニヒルになりモテ期が到来したことを目の当たりにして、私を始め他の友人たちは真似をしたのは言うまでもない。
更に、二番煎じだった我々はその恩恵をさずかれなかったことも言うまでもない。

話が飛びました。
地球上の動植物には見た目は美しいが、猛毒を持っている個体が沢山あります。
海の生き物もその例外ではありません。

しかし、美味しいもので毒があるそんな生物はどうでしょう。
一番に思い浮かぶのがフグですね。
釣れたフグを調理して肝を食べたら、テトロドトキシンという猛毒で命を落とす事故が昔からありました。
そもそもフグに猛毒がある理由というのは、フグが海中で生活する上で必要な餌、有毒プランクトンを食べたヒトデや貝などを捕食したときに、捕食した餌の有毒成分が肝をはじめ内臓や筋肉、皮膚に蓄積されてゆきます。
これを食物連鎖による生物濃縮といいます。

また、この生物濃縮に関連する毒は季節によって毒の量が変わり、種類によっても毒を持つ部位が異なります。
そのため、フグを料理するには種類ごとに毒を持っている位置を見極めなければならず、フグの有毒部位の除去が行うことができる必要な知識が認められた「ふぐ調理師」という免許がないと、飲食店ではフグ料理を出すことができません。

石川県の名産、フグの卵巣の糠漬けは食用可能な状態まで減毒がされていますが、そのメカニズムは未だ解明されていません。
糠漬け中に卵巣から毒が桶内に拡散するためと言われており、糠漬け一年後の卵巣の毒量が1/10まで落ちていたことが突き止められましたが、減毒の過程は不明のままです。

一方養殖のフグ(主にトラフグ、クサフグ)は給餌する餌により無毒化のフグを生産することに成功しましたが、養殖環境によってはテトロドトキシンが確認されており完全無毒化に至っていません。
また、テトロドトキシンが体内にないフグは咬み合いなど異常行動を起こす傾向があり、テトロドトキシンを含有した餌を与えたところ魚が落ち着いたという報告があります。

冬の味覚の代表格のフグは、てっさ、ふぐちり、唐揚げ、白子など非常に美味しく様々な料理で楽しめます。
しかし、フグが含有しているテトロドトキシンは300℃以上の高温処理でも減毒されず、また血清も開発されていないため、自分自身の判断でフグを捌くことはやめましょう。
決して「フグは食いたし、命は惜しし」と中毒を覚悟の上での食事はやめてください。
信頼されたフグ専門店で美味しくいただきましょう。

 

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