鹿児島県で岩牡蠣の種苗生産開始とその副産物


平成25年、鹿児島県水産技術センターにて岩牡蠣の種苗生産を開始しました。
当年9月に採卵した幼生を一か月間の陸上飼育後、海上に吊るして飼育をしております。

岩牡蠣の種苗生産を始める大きな理由、何だと思いますか?
新魚種の生産で地域の水産や経済活動に貢献するから!?私は最初そう思いました。
しかし、もっと意外なことが岩牡蠣生産のはじまりの理由で、それは何と赤潮対策なのです。

赤潮とは海水の富栄養化が進みすぎてしまい、プランクトンなど珪藻の異常発生が起きてしまうことです。
そのとき海水中の溶存酸素量が著しく少なくなり、珪藻類が毒素を産出します。
赤潮近辺の魚は酸欠になりますが、更に物理的な問題として、魚のエラに異常発生したプランクトンが詰まり窒息してしまうのです。
特にシャトネラ・アンティカという珪藻の大発生が赤潮を引き起こします。
鹿児島県は日本で最もブリ・カンパチの養殖業が盛んです。
養殖は漁港や事業者の近くの海に生け簀を張り、その中で種苗の畜養を行うので赤潮の発生は養殖魚にとって致命的です。
鹿児島県では赤潮対策にかなり力を入れていますが、それでも時折発生します。

さて、その赤潮と岩牡蠣の関係についてですが、牡蠣は海中に漂う植物プランクトンや有機物が主な餌となり、赤潮発生源のプランクトンも捕食対象になります。
1個の牡蠣で一日300~500リットル(!)のろ過能力があり、牡蠣は海中の有機物を漉し取る役目が期待されています。
そしてカンパチやブリの養殖と並行して牡蠣の養殖が行えるといった、養殖事業者の経営多角化に弾みが付くとしています。

さて、鹿児島近辺の自治体は九州北部や広島が有名ですが、いずれも真牡蠣養殖が主流です。
敢えて岩牡蠣を種苗に選定した理由、それは鹿児島県沿岸の海水温が他の牡蠣養殖自治体よりも高いためです。
一般的に真牡蠣は冬が旬の貝で冷たい水温には強いですが、夏場の鹿児島の海水温は30℃近くまで達することもあり真牡蠣の生活環境には厳しいのです。
一方夏が旬の岩牡蠣の生息環境は、鹿児島の海の環境に適しているのです。

種苗生産を開始した翌年の夏(2014年)には養殖用種苗の出荷サイズの30mmに達し、県内5か所の沿岸で漁業者が中心になり、商品として通用する大きさのサイズまで養殖試験が継続されています。
これまで鹿児島は牡蠣を食べる習慣が余りありませんが、岩牡蠣の生産が今後順調に進んだとき、色んな薩摩牡蠣料理が楽しめそうです。

 

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