魚の初期種苗生産で大切なこと…仔魚の離乳食 その3


さて、前回では種苗生産に於いて、ふ化したばかりの仔魚の離乳食となる「シオミズツボワムシ」の培養について綴りました。
ワムシは種苗生産中では常に培養を続ける必要があります。
培養方法は何通りかあり、その種苗生産期間で最も適した手法が取られています。※1
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オーソドックスな手法は「植え継培養」といい、培養水槽に海水を張り培養液とワムシを入れて、エアホースで培養液を通気と循環させることで、ワムシを増殖させます。
仔魚の摂餌の際に培養して増殖したワムシを全て回収します。
簡単な手法ですが、ワムシの餌の食べ残しや排泄物で培養液が汚れやすいので、培養期間は短期間です。
そのため、ワムシを回収した水槽は洗浄して、また海水と培養液、ワムシのセットをする手間が掛かります。

人の手を省いて省力化した方法が「間引き式」といい、しかも植え継式よりもワムシの密度を濃くして培養ができます。
給餌で使う分のワムシを回収後、引いた分の海水と培養液を継ぎ足して,ワムシ培養を継続させます。
植え継式より大きな水槽を使う必要がありますが、同じ水槽で長期間の培養が可能です。

培養して回収したワムシはそのまま給餌には使えません。※2
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ワムシに栄養強化を図ることで、仔魚にも栄養を与えることが重要なのです。
栄養強化は培養槽から回収したワムシを、別に用意した栄養強化専用の水槽に収容します。
海水と、培養液が入って通気していることは培養水槽と手法が変わりませんが、培養液は栄養強化剤が投入されています。
一般的にビタミンやカロチン及び、不飽和脂肪酸(EPAやDHA)を添加します。
栄養強化は24時間行います。
給餌の時間になると、栄養強化が済んだワムシを回収して紫外線照射海水で洗浄します。

ワムシを食べた仔魚は腸管にワムシが入っているのが確認できます。※3

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毎日数回仔魚を顕微鏡で検鏡して、食事、消化状況を確認します。※4

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元気な仔魚はワムシをモリモリ食べて、ヒダがある腸管のなかでしっかり消化しています。
しかし、ワムシに細菌がついている場合や活力がない弱った個体の場合、それを食べた仔魚が消化不良を起こすことがあります。
消化不良を起こした仔魚は腸管のヒダがなくっており、腸管の中のワムシが生きている場合があります。
更に、腸管や摂餌したワムシにビブリオ菌がうようよと蠢いているのが確認できます。
生命力が小さい仔魚は、消化不良でも命の危険が迫ります。
そのため、培養中のワムシの活力を確認することや、給餌前のワムシの殺菌は生産担当者にとって大切な業務です。

ワムシの培養水槽をぱっと見て、活力があるワムシが高密度で培養されているときは、エアレーションで撹拌された培養液には大きな泡が沢山たっており、培養液の色が薄くなっています。
一方、生息環境の悪化でワムシが弱ったりして、個体数が減っている水槽は培養液の色が濃く、泡立ちも殆どありません。

種苗生産初期にワムシがなくなることは致命的なことで、それを防ぐため常にワムシの培養の種を保存して給餌数以上のワムシを確保しています。
しかし、それでも仔魚の成長が早く摂餌量が急激に増えるなど、給餌用ワムシが不足することがあります。
そのときは近隣の種苗生産期間にワムシを融通してもらうことがあります。
生きたワムシを輸送する方法も確立されています。

※1画像出典元:http://www.osaka.zaq.jp/saibaigyogyo/kannai/wamushi.html
※2画像出典元:http://ncse.fra.affrc.go.jp/15kouza/15kouza_w09.html
※3画像出典元:http://blog.goo.ne.jp/kanagawa-sfa/e/694aac1e8cc8817e6230c3a3cf909b9a
※4画像出典元:http://ncse.fra.affrc.go.jp/14nikki/200802.html

 

<その2

その4>

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